様々なゲームやアニメ、映画などのテーマや題材で素材として使われているギリシャ神話のオリンポスの神々ですが、使われ方や登場の仕方は、作品によって作られており、元になるギリシャ神話では意外と一般的なイメージとは異なること事実があります。
ゼウスやポセイドン、ハデスだけではないもっとマニアックなギリシャ神話の登場人物知っていくと神同士のつながりや関係など、さらに面白くなっていきます。
今回は酒の神ディオニュソス、家庭の炉の女神ヘスティア、軍神アレス、鍛冶の神へファイトス、恋の使者エロス、火を人類に与えたプロメテウスを紹介します。
様々な語源や壮大な物語をお楽しみください。
是非最後までご覧ください。
酒と演劇で人々を陶酔させた異端の神ディオニュソス
親:ゼウス /セレメ
ディオニュソスの悲劇的な誕生
酒の神ディオニュソスは、ゼウスと人間の娘セレメとの間に生まれましたが、彼の誕生にまつわる話はとても悲劇的なものです。
ゼウスは美しいセレメに夢中で「お前の望みは何でもかなえてやるぞ」といいました。
これを天上から聞いていたのが、嫉妬深い恐怖の妻ヘラです。
夫と愛人の姿に業を煮やした彼女は、悪知恵を働かせ、セレメをそそのかし「愛しているなら、ありのままの姿を見せてほしい」と言わせます。
そんなことをしてしまうと人間は死んでしまうということを隠して・・・
しかたなくゼウスは、雷を操る神の姿を現しました。
そして、ゼウスとその甲冑が放つ光に焼かれ、セレメは灰になってしましました。
セレメが身ごもっていたことに気づいたゼウスは、彼女の体から胎児を取り出し、腿の間に埋め込みました。
こうして体内で育てられた赤ん坊は、月満ちてゼウス腿の中から生まれ出ました。
これがディオニュソス、ローマ神話でいうところの、酒の神でおなじみのバッカスです。
成長した彼はヘラの目を逃れ地上をさすらい、そのときに身につけたブドウの栽培やワイン造りの知識を、行く先々で人々に広めました。
これ以降、酒を覚えた人間たちは、酔っ払い、やりたい放題の大騒ぎを繰り広げました。
ディオニュソスが母の灰の中からよみがえった話は死と再生、酒による興奮と狂気と性的陶酔を象徴します。
信者たちは酩酊し、暴力的になり、流血を好み、奔放な性に酔いしれました。
熱狂的カルト集団の中心的な神となったディオニュソス
こうして彼は、小アジアを中心とした熱狂的カルト集団の中心的な神
となり、古い秩序を守る為政者たちから見れば異端となりました。
長旅の末に故郷テーバイに戻ってきたディオニュソスは自らの信仰をこの地に打ち立てようとしました。
彼の後ろからは女性信者たちの群れが、恍惚として歌い踊りながらついてきます。
影響力を恐れたテーバイ王ペンテウスは信仰を禁止し彼らを捕らえようとしたが、ディオニュソスは信者たちとともに山の中に逃げました。
女性信者の群れには、テーバイの人々も混じっており、王の母や姉妹もその中にいて、激怒して追ってきた王の姿は、幻覚を見ていた女性たちの目にはライオンに映りました。
そしてペンテウスの母親を先頭に、なんと女性たちは王に飛びかかり八つ裂きにしてしまったのです。
こうして多くの崇拝者たちを獲得したディオニュソスは、冥府に赴いて自分の母を救い出し、晴れて神々の仲間入りをしたのでした。
なお、ディオニュソスを称える退廃的な祭りは、時代が流れるうちに軌道修正され、やがて劇場で行われるようになりました。
アテナイをはじめとするポリスでは毎年ギリシャ悲劇が演じられて、詩文芸が発展しました。
このようにしてディオニュソスは、演劇の神としてもあがめられるようになったのです。
家庭の中心の炉を守る処女神ヘスティア
親:クロノス / レア
炉の女神ヘスティアってなにもの?
炉の女神ヘスティアはゼウスの姉であり、オリンポス12神のひとりです。
彼女はゼウスの館の炉の番をしており、一度も下界に降りたことがありませんでした。
そのため、エピソードは多くありません。
ヘスティアはポセイドンとアポロンにプロポーズをされたこともありましたが、結婚を嫌い、ゼウスに永遠の処女でいたいと懇願し、これを許されました。
炉は家の中心にあり、家庭が集う大切な場所
古代ギリシャでは炉は家の中心にあり、家庭が集う大切な場所でありました。
その炉を司るヘスティアは家庭の守護神として敬われていました。
人々は食事の前後に必ず彼女へ供え物をしたといいます。
また、子供が生まれると彼女のもとへ連れていき、そこで初めて家族に一員とみなされたのです。
当時は家庭の延長線上に国があると考えられていたので、ヘスティアは国家安泰のための守り神だったのもあり、人々は彼女にささげるいろりを街の中に作り、絶えることなく火をもやし続けていました。
この場所は会議の場でもあり、新植民地建設の際には、この炉の火を聖火として、新たな地にもたらすのが日常でありました。
血なまぐさく冷酷な軍神アレス
アフロディテの愛人でもあった軍神アレス
古代ローマの戦いと復讐の神マルスの捧げられる祭壇は、毎年マルスの月である3月「March」にあり、戦争の勝利祈祷が行われました。
また歴代皇帝は、「マルスの矢」と呼ばれる矢を常に保管し、それは特別な力をもつものだと信じられていました。
ローマではそれほど重要な神であったのにもかかわらず、ギリシャ神話のマルスにあたる軍神アレスは登場回数は非常に少ないです。
美男であったことは確かであったようですが、ゼウスとヘラの息子で、オリンポス12神のひとりでもあるのにもかかわらず、人妻アフロディテの浮気相手にして凶暴、冷酷であるという以外、これといって特徴もありません。
ギリシャの人々に嫌われていたのかも・・・
しかも、人間の英雄ディオメデスに敗れたり、巨人の兄弟アロアダイに13か月も壺の中に閉じ込められたり、戦いの神というのに、神話の上ではろくなエピソードがありません。
同じく軍神アテナが、戦争における策略や栄誉を表しているのに対し、アレスは戦いの狂乱と破壊を表しています。
ギリシャ人は残忍なイメージの強い彼を、あまり好きではなかったようなのです。
最も醜いが腕は確かな鍛冶の神へファイトス
親:ヘラ
鍛冶の神へファイトスとは?
ゼウスが一人でアテナを生んだのに対し、ヘラが一人で産んだ子供がこのへファイトスです。彼はオリンポス十二神ののひとりで、鍛冶を司っていました。
神々といえばほとんどが美しい容姿をしているのに、彼は非常に醜く、足も不自由でした。
これはゼウスと大喧嘩したヘラがした(ゼウスという説もある)、腹たちまぎれに彼を下界に投げ落としたせいだと言われています。
鍛冶の神としてそして火の神
海に落ちたへファイトスは海底で育ち、そこで鍛冶の技術を習得します。
へファイトスに作れないものはなく、神々のために武具や装飾品、家なども作りました。
その技を生かして浮気者の妻を懲らしめたこともあります。
見えない綱を作り、妻のアフロディテと浮気相手のアレスをベットに縛り付け、神々の前に全裸のふたりをさらして笑いものにしたりしました。
それにしても醜いへファイトスの結婚相手が、美の女神アフロディテだというのも皮肉ですね。
鍛冶のときに自在に火を操ることから火の神でもあり、ローマ名ヴァルカヌスは火山(ボルケーノ)の語源となりました。
へファイトスの仕事場は火山の奥にあったといわれています。
いたずら好きな恋の使者エロス
親:ガイアまたはアレス/アフロディテ
恋の使者エロスとは?
エロスは地母神ガイアから生まれ、世界の世界の始まりから存在する神だが、後にアフロディテがアレスと不倫してもうけた子供とされました。
このため本来は恋と性愛を司る男性神だったのが、時代が下るにつれ、翼が生え、弓と他を持つ愛らしい子供の姿(キューピット)に描かれるようになりました。
エロスはいたずら好きで、愛の弓矢で神や人の恋をもてあそんでいて、その金の矢で打ち抜かれたものは激しい恋に落ち、鉛の矢で打ち抜かれたものは恋が出来なくなるのです。
エロスが行ったいたずらとは?
あるとき、アポロンにばかにされたエロスは復讐を謀りました。
まずアポロンの胸を金の矢で射抜き、次に川の神の娘ダフネに鉛の矢を放ちました。
一瞬にして恋に落ちたアポロンは、ダフネに愛を迫ったが、彼女は拒否をするばかり。
とうとうアポロンは川のほとりまでダフネを追い詰め、彼女は求める愛から逃れるために父に祈り、月桂樹に姿を変えたのです。
嘆き悲しむアポロンは、愛のあかしとして月桂樹の葉で編んだ冠を作り、これを永遠に外すことはなかったのです。