【キングダム】蔡沢(さいたく)合従軍の鎮圧に一役買った
蔡沢(さいたく)は
「呂不韋四柱」
の一人で、主に相談役や外交を務めており、極東の燕に出向く機会が多いようです。
趙の李牧の策略により合従軍が興ったとき、昌平君の提案を受けた蔡沢(さいたく)は斉に出向きます。
斉(せい)の王建王(おうけんおう)となじみのある蔡沢(さいたく)は謁見に成功すると、単刀直入に
「趙丞相李牧に・・・一体いくらで買われました」
キングダム第265話
と尋ねました。
そして、李牧が提示した倍額を約束すると持ち掛け、会談ひとつで斉を合従軍から離脱させるという難題を見事にやってのけました。
史実によれば蔡沢(さいたく)は燕(えん)の出で、諸国を遊説して回るもなかなか才能を認められずに、生活に困窮したこともあったようです。
しかし、後の昭王(しょうおう)の丞相(じょうしょう)まで上り詰め、政の代まで秦の中枢を務めました。
【キングダム】蔡沢(さいたく)六国合従軍にヒビを入れた遠交近攻策(えんこうきんこうさく)
戦国時代の中国で考え出された外交の基本戦略
戦国春秋時代に生まれた外交戦略として有名なのが、遠交近攻策(えんこうきんこうさく)というものです。
これは政の曽祖父、昭王に仕えた秦の政治家范雎(はんよう)が考え出したもので、彼はこの原則に基づいた外交政策で秦の領土拡大に貢献し、後の丞相にまで上り詰めたのでした。
遠交近攻策(えんこうきんこうさく)とは、遠くの国と友好関係を結び(遠交)、近くに国を攻める(近攻)という意味です。
遠方の国と戦争するのは時間も労力もかかるうえに、勝利したところで支配するのが難しいとされています。
むしろ、そのような国とは同盟を結び、友好的な関係を築いたうえで、両国の間に存在する国を挟み撃ちにすべきだ、というのが、この遠交近攻(えんこうきんこう)の考えです。
范雎(はんよう)は、隣国の魏と同盟して、遠方の斉を討とうと考える昭王に対し、逆に斉と組んで魏と戦うべきだと説きます。
范雎(はんよう)の意見を採用した昭王は、背後の斉に備えるため、秦との戦いに全力を出せない魏を打ち破り、その領土を奪うことに成功したという逸話があります。
この范雎(はんよう)の後任の丞相が、キングダムで呂不韋の側近として登場する蔡沢(さいたく)です。
六国が合従軍を結成した際、その加盟国である斉の建王(けんおう)に謁見した彼は、王を説得し、合従軍から離脱させます。
これにより、合従軍は戦力の低下に加え、背後に斉という敵を抱えることになりました。
つまりかつての魏のように、秦との戦いに全力を出せない状態になってしまったのです。
蔡沢(さいたく)は侵攻のために編み出された遠交近攻策(えんこうきんこうさく)を、防御戦争の手段としてみごとに応用してみせたのです。
もちろん、この策を成功させるには、長い時間をかけて遠国との信頼関係を築かなければなりません。
合従軍を抜けた理由について建王が、
「李牧より蔡沢(さいたく)の方が付き合いはながいからのぉ」
キングダム第265話
と発言しているように、外交においては国同士の信頼が何よりも重要視されるのです。
ちなみに、このように長年友好的な関係を築いてきた秦と斉ですが、その関係もやがて終わりを迎えることになります。
秦が斉以外の五国を征服し、斉が攻めるべき近くの国になると、、始皇帝・政は、容赦なくかつての友好国を滅ぼしました。