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尊王と佐幕の間で揺れた幕末四賢侯の1人
1827年、土佐藩10代藩主。山内豊策(やまうちとよかず)の五男・豊著(とよあきら)と側室の間に生まれます。
13代、14代藩主が相次いで急死したため本家の養子となり2歳で15代藩主の座に就きました。
1853年黒船来航を機に幕内改新派の吉田東洋を抜擢、海防強化など、藩政改革を積極的に進めました。
また、幕命により参勤交代後も江戸に滞在し、幕末の四賢侯と呼ばれた
- 福井藩主・松平春嶽(まつだいらしゅんがく)
- 薩摩藩主・島津斉彬(しまずなりあきら)
- 宇和島藩主・伊達宗城(だてむねなり)
らとともに幕政に関与していきます。
将軍の後継ぎ問題では一橋慶喜の擁立を画策するが、反対勢力の井伊直弼(いいなおすけ)が大老に就任すると、14大将軍は徳川家茂(とくがわいえもち)となり一橋家は敗北します。
1859年幕府より謹慎の命が下り豊信は実子ではなく本家の鹿次郎(豊範)に家督を譲り、33歳の若さで隠居となります。
隠居後「容堂」と名乗りました。
この時期に、実父と14歳の長男・郁太郎を亡くす不幸に見舞われています。
幕末の四賢侯とは?
幕末に活躍した4人の大名のこと。
藩政だけでなく幕政にも積極的に参加しました。
第14代将軍徳川家茂が誕生すると、四賢侯らは謹慎の身となってしまいます。
その間、土佐では吉田東洋が開国貿易、富国強兵を目指し藩政を断行していたが、尊皇攘夷の土佐勤王党が、1862年、東洋を暗殺してクーデターを起こします。
この年に幕府から完全に謹慎を解かれた容堂は翌年、土佐に帰国しました。
隠居の身ながら藩政に復帰します。
尊皇精神に厚い一方で幕府寄りの公武合体を理想とする容堂は、過激な反幕適尊皇攘夷を貫こうとする武市半平太(たけちはんぺいた)ら尊王党を弾圧、粛清していきました。
1866年、坂本龍馬ら土佐脱藩志士たちの仲介により薩長同盟が成立すると、時代は倒幕へと加速していきます。
武力倒幕を危惧した容堂は、徳川政権を存続させる打開策として徳川慶喜に大政奉還を建白しました。
しかし大政奉還後、討幕派が王政復古の大号令を出し、幕府の政治関与を終わらせることになります。
新政府最初の小御所会議で容堂は、徳川家を中心とする列侯会議による政府を要求、岩倉具視(いわくらともみ)と激論を戦わせたが希望は叶いませんでした。
維新後は新政府から内国事務総裁などさまざまな役職に任命されたが、もはや大名が政治の第一線で活躍する時代ではありませんでした。
容堂は中央政界から去り、1872年不摂生な生活を送っていたため、46歳の若さで脳溢血により亡くなりました。
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稀代の大物か、またはやりたい放題の「いごっそう」か?
「総べて世間の人物睥睨なされ誰も一文銭に値せずと思召され侯御様子」
松平春嶽(まつだいらしゅんごく)の側近、橋本左内(はしもとさない)は容堂の印象をこのように記したといいます。
容堂が老中首座の阿部正弘に会見した時には、
「天下の政治を一身に引き受けられ御心労さぞかしと拝察する。いや、かく申すは表面のこと、実はたくさんの馬鹿大名を相手の事とてお気楽なことかと存ずる。ただ土佐だけは今後少々御厄介になりたい」
と傍若無人の口上だったと伝えられているが、容堂の舌鋒鋭さを物語っています。
この後、同志となる2人だが阿部が急死すると容堂は周囲の反対を押し切り、すぐにそのお気に入りの妾を自身の側妻にしました。
「いごっそう」とは?
土佐弁で「快男児」「酒豪」「頑固で気骨のある男」などを意味します。
情熱の赴くままに行動する容堂らしい逸話でしたね。
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鯨のごとく飲み続けた酒豪の藩主「鯨海酔侯」
漢詩漢文の素養が高く、風雅を愛する才人の容堂だが、イギリス公使パークスの通訳アーネスト・サトウは容堂の印象を次のように語っています。
「容堂は身の丈が高く、すこしあばた顔で歯並びが悪く、早口でしゃべる癖があった。彼は確かに体の具合が悪いようだったが、これはまったく大酒のせいだったと思う」
世間から
「酔えば勤王、覚めれば佐幕」
と比喩されたように、自地ともに認める酒豪でした。
酒量は1日3升、接客中でも酒盃は放さず、外出するときは腰に瓢をくくりつけていたといいます。
手紙などに使用した名前でも鯨海酔侯、未酔漢、酔侯、朝酒生、狼先生など酒にまつわる名前ばかりでした。
維新後は連日のように両国や柳橋の遊郭で豪遊!!!
芸子に歌わせ、お抱え力士に踊らせ、芸妓を落籍(身請け)、2か月以上の箱根旅行など徹底した放蕩ぶりで、死後は葬儀代にも困ったといいます。
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